Yahoo 知恵袋で以下のようなやりとりを見かけました。
Q. なぜスキューバプロのBCDクイックコネクトはサイズが違うのですか?
A.
AIR2はBCにくっ付いてますから、アレがぶっ壊れた場合、ユーザーさんが「BCだけレンタルお願いします」って頼んで来ることになると、多くの場合、その人のスクーバセットはオクトパスが無い状態になり、それでは安全性がダダ下がりします。
でも、コネクターの径を変えておけば、その人はレギュセットも借りるしか無くなり、それにはオクトパスも付いてますから安全性低下の恐れは無いですね。
だから、敢えて径を変えてるんです。
中圧ホースを太くしないと呼吸し難くなるので径を変えてるってのは大嘘でござんす。
という、ユーザーの安全性維持を願う親心でしょう。笑
だからってわけじゃ無いんですけど、私はAIR2や同等タイプのオクトパスインフレーターはお薦めしません。
給気ボタンに異常が出た際には中圧ホースを素早く抜くスキルはOWDコースで必須ですけど、抜いたらオクトパスとしての機能も失ってしまうなんて、生命維持装置として落第だと私は思っています。
上のやりとりを説明します。回答はぼくではありません。
Scubapro Air2 のプラグとそれにつなぐ中圧ホースのカプラーは、実は一般的に使われている規格と異なる規格で作られています。
質問はなぜ?と仰っているわけです。
それに対して回答者の方は「アレがぶっ壊れた場合」と仰っています。アレというのは Air2 が壊れた場合ということなのですが、この壊れ方の補足がないと回答の意味が分からなくなります。なのでそこを補足します。
Air2 というのは通常の BCD のパワーインフレーターにオクトパス機能を追加して、ダイビング中に余分にブラブラするものを減らそうというコンセプトの製品です。
便利なのですが問題があります。
回答者の方は「アレがぶっ壊れた場合」と回答されていますが、パワーインフレーターで一番多いトラブルは、吸気ボタンを押したら空気の供給が止まらなくなるというものです。
原因の多くがメンテナンス不良による塩噛みです。要するに使った後にちゃんと真水で洗ってないということが原因です。つまりユーザ自身が自分の機材をきちんと使用後に洗ってないから、いざ使うって時に空気の供給が止まらなくなるなんてことが起きます。
BCD への吸気が止まらなくなるので、放置すると何が起きるのかと言うと、ダイバーは水面に向けて急浮上していくことになります。すると急浮上によるパニックから呼吸を止めてしまい肺損傷を起こしたり、浮上速度が早すぎることから減圧症になってしまう可能性がとても高くなってしまいます。
特に前者は死亡事故に直結するとても危険な状態です。ですからオープンウォーターの講習では、そのような BCD の膨張過多による急浮上を防ぐために、水中で BCD のパワーインフレーターから中圧ホースを抜く練習をします。死なないために必要なことなのですね。
まだ中圧ホースを抜いた状態だと、BCD に吸気できませんから、水中での口から BCD へ吸気する練習もします。水中で BCD に吸気しないと、ダイバーはどんどんと沈んでいってしまうからです。どちらも水中で死なないために必要な練習ということになります。
それで先の回答に戻りますが、わかりにくいのですが回答はその BCD への吸気が止まらなくなるという、よくあるトラブルを想定して回答されています。
BCD へのエアの供給が止まらない場合、中圧ホースをパワーインフレーターから抜くしかありません。Air2 の場合、それはオクトパスを失うということを意味します。
仮にバディがエア切れを起こした場合、オクトパスがないのとあるのとでは、生還できる確率に天と地ほどの差が出てきます。ですから通常オクトパスの喪失というのはありえないと、オクトパスが存在する現在では誰もが考えます。
先の回答では Air2 の塩噛みトラブルはオクトパスの喪失を意味しますから、BCD のレンタルだけでなくレギュレーターセットの交換も必要だという話を、読み取りにくいのですが、説明しているわけです。
レギュレーターセットもレンタルすれば、それにはオクトパス、つまり通常の予備のセカンドステージも付いていますので、もしものエア切れにも対処でき、少なくともリスクは悪化しないという主旨の回答をされているわけです。
さらにはプラグとカプラーのサイズを一般的なものと変えることで、BCD とレギュレータセットを、より安全な組み合わせに強要するという親心であるかも知れない、と仰っているわけですね。
なお回答者の方は Air2 は生命維持装置として失格と厳しい評価をされていますが、実はぼくもそう思っています。同様の製品が NDS からも出ていて、ぼくもそれを使っていましたが、それとは別に予備のセカンドステージをつけていました。
ぼくはメインのセカンドステージと合わせると合計 3 つのセカンドステージがくっつけていたことになります。理由は最大で 3 人が呼吸できること、Air2 タイプのものが使えなくなっても 2 人は呼吸できるからです。
ですけれどぼくも回答者の方と同様に Air2 タイプのオクトパスは、いざというときに信頼してはいけないと思っています。
以上が Yahoo 知恵袋で見かけた Q&A の補足説明なのですが、これを見たことで引き起こされたトリガーで、昨年 9 月にぼくがぼくの師匠に激しく叱責されたことを思い出したので、以下に書いていきたいと思います。いや、あれは激しく叱責されて当然なのです。安全に直結することだったので。
21 年ぶりに潜ることになった前日でした。ぼくはそのとき自分の機材はウェットスーツしか持っていなかったので、ほかは全てレンタル機材ということになります。
翌日の準備のために全機材を選んで、セッティングを一度するわけです。ぼくがセッティングを忘れてないか師匠にチェックされてたのですね。
正直レンタル機材なんて Open Water I の講習のときくらいしか使ったことがないので、正直セッティンをしながら、ちょっとやだなぁ、と思っていました。やっぱり自分がが使い慣れたいつもの機材がいいなぁ、って。もう捨てられて残ってないのですけどね。
いつもの機材なら細かな調整もほぼ不要です。しかも自分に合うようにすでにセッティングされている状態になっています。ですけれどレンタル機材はそうはいきません。面倒だからではなく、今調整してるここ、トラブルになんねぇかなぁ、って不安を抱えながらセッティングしているわけです。
そんな感情を持ってしまうくらい、ぼくはレンタル機材というものを信じず、好きじゃないどころか、はっきりと嫌だったりします。自分の管理から離れているものに命を預ける気になれないのですね。
それを口にしたら師匠におれのレンタル機材を信用できんのか!?と言われそうですけど (苦笑)、やっぱり機材っていうのはダイバー本人と一心同体だと思うのですよ。どう考えても替えがきかない。
機材はダイバーの身体の一部だと思うし、命を支えるものだから、見ず知らずの機材に自分を預けるのはやっぱり嬉しくないのですね。なのでレンタルで充分って言ってる人を見ると、すごいなぁ、肝が座ってるなぁ、それか身体能力がすごいのかな?もしかして水深 -30m くらいから全機材捨てて生還できる超人なのかな?(そういう人は実際にいます) とか思ってたりします。超人ならそれこそ機材なんてなんでもいいでしょうし。
ぼくがセッティングをしてチェックをしているのを師匠が怖い顔でずっと見ています。師匠は厳しい人ですが、ぼくは師匠をあまり怖いと思ったことはありません。それより怒った時に発せられる言葉にすごくたいせつなことが散りばめられていることをぼくは知っているので、怒られているときこそぼくにとって最大のチャンスだったりします。
怖い顔で見ていたと書きましたけど、要は超ベテランインストラクターが真面目にゲストのセッティングを観察するように、ぼくがセッティングをしている姿も観察されていたに過ぎないってことなのですけどね。
でもたとえそれが師匠でなくてもじっと見られ続けると緊張します。26 年前とはいえアシスタント・インストラクターだった事実はあるので、やはりミスらないようにしないと、とやっぱり緊張してしまうのです。
それで BCD をタンクに取り付けレギュレータをタンクに取り付け、中圧ホースを BCD のパワーインフレーターにつなげようとしたときです。中圧ホースのカプラーが塩で固着していてスライドできず、パワーインフレーターのプラグに接続することができません。
今だったらどうすればいいのか簡単にわかります。以前からもわかっています。当たり前のことを当たり前にやればいい。単純に師匠にこう言えばよかったのです。
「レギュレーターセットを交換してください」
そのときぼくはじっと観察されていることもあって、たったこれだけのことで半ばパニック状態になっていたのですね。よりにもよってこう口走りました。
「オーラルで吸気すればいいか」
普段絶対に言わないことを師匠の前で言ってしまったのでした。
「おい、レギュをタンクからはずせ。中圧ホース交換するから」師匠から低い声が飛んできます。その瞬間しまったと思いました。いつもなら絶対に言わないことを言ってしまった、ぜったい選ばない判断を選ぼうとした、ってことが一瞬にしてわかるわけです。
さらにレギュをタンクから外している時に気が付きます。中圧ホースが緩んでいて手で回せばファーストステージから外れます。まじか!!なんでセッティングの時に気づかなかった!?
「すいません、中圧ホースが緩んでいます。締めていいですか?レンチ貸してもらえますか?」
「いい、おれがやる」
師匠の手にはすでにモンキーレンチが握られています。
は、謀ったな!!シャアっ!!
やられた。
師匠はぼくがセッティングを覚えてるのかどうかを観てたんじゃなかった。
元アシスタント・インストラクターのぼくに、あえて問題のある機材を渡してぼくがおかしな判断をしないか観てたんだ!!
そらそうだ。アシスタント・インストラクターまでやってた人間に、そしてインストラクターになって開業しようとしていた人間に、機材をセッティングできるかどうかなんて、そんなあまりに基本的すぎるチェックなんてするはずはなかった。
くぁぁぁぁぁっ、やられた!!
これ、後で絶対なんか言われるわ、って思ってた。思ってたらほんとにそのとおりだった。夜 9 時から 12 時近くまで説教されました。ぼろくそに言われました。
でも何を言われるのかセッティングのときに、もうすでにわかっていたので、精神的なダメージはかけらもありませんでした。説教タイムは貴重な復習時間だったのでした。もともと師匠の説教で萎縮したことはないのですけどね。やっぱり師匠の説教タイムはぼくにとって昔から貴重な勉強時間なのです。
説教 3 時間と書きましたが、その時間の間多くは、師匠から矢継ぎ早に質問が出されて、それにスパンスパンと答えていって、最終的に「なんや、おぼえとるやん」との評価をもらったのでした。そりゃぁぼくを一体誰が鍛えたと思っとるんですか (笑)
そのとき、ぼくがそれまで知らなかったことも教えてもらえましたし。ゲストが流されてしまった時に、海上保安庁に何を知らせれば救助が早まるのか、なんてこともその一例でした。
講習じゃ教わらない生きた知恵と知識を教えてもらっていたので、今でも OJT だな、と思ったのでした。つまり 21 年も潜ってないのに、まるで現役のアシスタント・インストラクター、ダイブマスター、インストラクター候補生のように扱われていたのでした。
ぼくはこれをありがたいことだな、と思うのですが変でしょうか?マゾでしょうか?(笑)