ぼくは 1999 年 3 月 21 日に生まれて初めてエア切れを経験しました。ダイビングを始めて 12 年目のことです。ダイバーとしてとても恥ずかしいことです。潔く腹を切れぃっ!!と上様のように言いたくなるくらい恥ずかしいことです。
水深 -15m だったこともあり普通に緊急スイミングアセントで生還しました。
そもそもそのとき、ぼくはぼくがエア切れで死ぬとは思っていませんでした。恐怖心もまったくなかったのを覚えています
油断がどうのこうのという文脈ではなく、緊急スイミングアセントで気道を開くために水面を見上げながら浮上している時に、これなら水面に戻れそうだ、と冷静に思っていました。
このときのダイビングは別の理由でぼくのトラウマとなってしまったのですが、そのことはこのサイトで何度も触れていますし、これからも振れると思いますので、今は省略します。
気になる人は過去ログを漁ってください。今年の 5 月以降のどこかに書かれています。隠すつもりはまったくありませんので。
今回のエントリーで述べようと思うのは、そのときの話ではなくて、そのとき -15m で水面に戻るのにどれだけのエアが必要なのかという話です。残圧 50 を残せという 50 bar ルールの話はちょっと横に置いておきます。
それでこれから計算をするのですが、最終的に生還するのにどれだけの空気が必要なのかを求めます。
それにはいくつかの前提があります。まずは自分自身の RMV を知る必要があります。ぼくの場合はだいたい 15 リットル/分です。
そして浮上開始から水面までの平均水深も必要です。それは浮上開始水深の半分の数字と仮定します。浮上開始水深を -15m と仮定しますので、平均水深は-7.5m と仮定したいのですが、さらに安全マージンを取って -8m とします。実際にはもう少し浅い水深かと思いますが、数字を厳しく見積もって安全マージンを設けるために最大水深の半分の水深と仮定します。-8m の絶対圧は 1.8 ATA です。この数字を使います。
次に必要な数字は水深 -15m から水面に戻るのに必要な時間です。これは多くのダイビングコンピュータでの減圧計算のもととなっている 1 分間あたり 9m という浮上速度を前提とすることとします。
またエア切れを前提とする計算なので、安全停止の時間は省略します。エア切れを起こしかけてるのに安全停止もへったくれもないからです。
ここまで前提をはっきりさせるとあとは単純計算です。
計算式は となります。
ぼくの場合は RMV は 15 なので、平均水深が -8m として、-15m から浮上に要する時間が なので、45 リットルのエアがないと水面には至れないということになります。
つまりぼくの場合はとても落ち着いて潜っている時に、10 リットルタンクを背負っている場合、残圧 4.5 気圧無いとエア切れを 100% 起こすということになります。
実際に住崎でエア切れを起こしたときは、理由が今もわからないのですけれど、ぼくの RMV が 20 でしたので、60 リットル、残圧にして 6 気圧を残していないと、100% ぼくはエア切れを起こしていたのでした。
これらの数字をみると、なんだそれだけあれば生還できるのか、と思うかも知れません。ですが自分で意識していなくても、エア切れという状況であれば心拍数も増えますし、浮上という行為は運動量が多くなります。
緊迫した状況ではエアの消費量は一気に 3 倍や 4 倍になるということが知られています。ですからこれらの数字をやはり 4 倍はしないと、恐らく生還は難しくなるでしょう。
ザクッと計算すると、ぼくは住崎でエア切れを起こしたとき、残圧 24 気圧を残して浮上を開始しないと、住崎の海底で死んでもおかしくなかったわけです。
当時実際にエアが切れてから緊急スイミングアセントで浮上したわけですから、それだけのエアがマイナスの状況で浮上を開始したという「アホやろお前」としか言えない状況だったわけです。
結局あの状況はすぐそばにいる指導インストラクターにすら気づかれない、誰にも気づかれないパニックを起こしていたからって結論なのですけど。
そんな計算をしてきたわけですが、RMV をもとにしたシミュレーションをしておくと、自分の残圧がどれだけだと、生還が難しくなるのかという理解に近づきますので、やらないよりはやっておくことをお勧めします。