バーr……blog のようなもの 2025 年 11 月

綺麗……

ちょっと今回は無粋な話になるのでイラストを描く人にはあらかじめごめんなさいしておきます。フィクションなんだからということはわかっているので、全部無粋な話ってことになります。きっとこれを読んで怒る人いるんだろうな。絶対いるよな。

バイクに乗ってるかわいい女の子が髪をなびかせてる画像を見て、ヘルメットをかぶらせて欲しいって言った人が、むちゃくちゃ Dis られてたのを目撃したりもしてるので。

Whisk にて生成
個人的には生理的に受け付けられないので、おそらくもう二度と生成しない構成の画像

夏場になると水着の女の子がプールや海の底に仰向けに寝そべって寝転がって水面を見ているような素敵イラストがあります。きれいですね。すごくきれい。

フィクションとしては、ですけれど。

いやほんとに、以下これから無粋な話を書くのでごめんなさい。くどいんですけど。

人が顔に何も着けずに水中で仰向けに寝転がるとですね、十中八九、そのイラストに描かれた女の子はだれかに救助されないと 1、2 分で溺死します。通常助かりません。

理由は明快で、水の中では空気は上に上がっていきます。義務教育を終了しているのなら、このことは誰でもご存知かと思います。人が水中で仰向けに寝転がるとですね、口は閉じることができるので問題にはならないのですが、鼻が問題になります。

鼻が閉じた空間に閉じ込められているダイビング用のマスクや、アーティスティック・スイミング (旧名シンクロナイズド・スイミング) 用のノーズ・クリップなどをしないとですね、体内というか肺の中の空気が全部鼻を通して水面に向かって出ていきます。

肺にはかわりに水が入ってきます。急いで水から引き上げて CPR を開始しないと、えらいことになります。でも溺水の場合は CPR をしても助かる確率は極めて低い。助かることを信じてやるのですけれどね。

Libreoffice Calc にて作成

このグラフは CPR などの BLS (Basic Life Support) を学ぶと必ずでてくるドランカーの救命曲線と呼ばれるグラフです。ダイビングの CPR を含む BLS の講座でも必ず学びます。

呼吸停止から直ちに CPR を実施すれば救命率は最も高くなります。2 分後になると救命率は 90% に低下します。3 分後になると救命率は 75% 程度にまで低下します。そして 4 分後であれば 50%、5 分後であれば 25% まで救命率が低下し、10 分後に CPR を開始する場合は救命率は 0% となります。

ですから CPR はいかに早く開始するかが非常に重要だと言えます。バイスタンダーによる CPR の実施が非常に重要であると言われる所以ゆえんです。

ただしこのドランカーの救命曲線は、あくまで地上での空気がある場所での救命率の変化を示しています。溺水者の場合は、肺の中は水で満たされていますので、通常の陸上での呼吸停止よりも、さらに状況はシビアになります。

要救助者が溺水者の場合は、本当に神様に助けてください!!と祈りながら、そしてはやく救急車来て!!と心の中で叫びながら、CPR を実施することになります。

本当は CPR マシーンと化して、ひたすら機械のように CPR を続けるのですけれど。そうでないと救命になんて至れないので。

なので最初に紹介したイラストは、イラストとしてはたしかにすごくきれいなんだけど、この後、何が起こるのかを知ってると非常にモニョるわけです。

なのでこういったイラストを見ると、きれいだなと思いつつも、この娘死ぬんだなっていつも思ってしまいます。すいません。イラストを描く人たちの怒った顔が見えます。声を荒らげてるのも聞こえるような気がします。フィクションなんだから!!という言葉が聞こえてきそうな気がします。

でもですね、モニョるくらいは許して欲しいと思うのです。ガンダムに「自由落下というものは、さほど自由ではないのだよ」という意味のセリフがありました。シャアが戦闘中に言ってた思うのですけど。そういた当たり前のことを、ちゃんと描いていてこのアニメは一味違うなと当時思いました。

やはり物理法則を無視して、かわいいキャラが必ず溺死するものを見てしまうと、あぁ、この娘、数分後に死んじゃうんだ、なんでこの娘は殺されなきゃいけないんだろう、ってどうしてもモニョってしまうのです。

あぁやっぱきっと画面の向こうで怒ってるんだろうなぁ。でもどうしても思っちゃうのです。かわいいキャラなんだから死なないように描いて欲しいなって。だって少しだけ上体を起こすだけで、そんなことは起こらないのですから。