バカなので後先考えずに買ってしまいました。
なおシグナルフロートは来月購入予定。
せんせい (磁気タイプのスレート) はもういいかなと思っています。これから意思疎通は全てハンドシグナルでやるという、ストロングスタイルでいこうかと。生物も全部ハンドシグナルで。
ガイドも含めて、みんなカメラ持って入ってる昨今、スクールやガイディングをするのでもなければ、もう今の時代にはせんせいは不要でしょう。
もうオープンやアドバンスの人らのガイディングをすることもなく、一緒に潜る人たちって、エキジットしてから、アンカーからあっちの何度の方向のあの岩のあたりにあれがいたねぇ、って話すだけで通じる人たちばかりになるでしょうし。
なにせみんなインストラクターやダイブマスター、アシスタント・インストラクターだったり、かつてそうだった人たちだったり、これからなろうって人たちだったりします。やっぱりそういう人たちにも、いつものように神経を尖らして潜らずに済む、リラックスして潜れる、オフの日のプライベート・ダイブって、やっぱり必要なのです。
それで画像のこれは何?って質問がネットであったので答えますね。これはですね、指示棒とダイブリールってやつです。
指示棒は文字通り、生物などを指すときなどに使います。
生物には棘を持ってて自己防衛のために刺すようなものや、毒を持ってるものもいるので、ほれ、これこれ、なんて直接指で指したくはないのですね。ミノカサゴみたいに刺されてしまうと手がグローブぐらいにまで腫れ上がるような生物もいますし。
他に指示棒は、流れがガンガンあるようなポイントに入るときには、根の岩に突き立てるように引っ掛けて (もちろん刺さりませんけど) 流れに逆らって泳いだり、止まったりするようなときの身体保持に使ったりもします。
流れのあるポイントでの身体保持の役割って、昔はもっぱらナイフがその役目を担っていました。
ですけれど銃刀法が年々強化されていって、安全のための装備であるはずのダイビングナイフも規制が強化されて、今では刃渡り 5.5cm を越えるナイフは、たとえダイビングのときであっても携帯が制限されています。
でもこんなちっちゃなナイフでできるのは、釣り人が海中に放棄したテグスが絡まったときなどに、それを切るぐらいしかできなくて、他の用途にはまったく役に立たなくなったという歴史的経緯があります。
実際にどんなときに一番ナイフを使っていたのかと言うと、やはり砂地や岩に刺したり突き立てたり引っ掛けたりして、流れに抵抗するのに一番使われていました。それが法律が厳しくなることで一切できなくなってしまったので、代替品として指示棒を使うことが、今では一般的になっています。
こういったことも、インストラクター、ダイブマスター、アシスタント・インストラクターが始めて、一般のファンダイバーにも広まっていきました。GULL から発売されているフィンのミューのユーザ拡大や、せんせいの導入などと同じ連鎖構造を見ることができます。たいてい最初に困り果てるのがインストラクター、ダイブマスター、アシスタント・インストラクターなのです。
ダイバーのなかには、ダイビング・ナイフを持たない人もいます。でも拘束されるようなことがあったらどうやって脱出するんだろう?とは思いますけど。海の中って投棄されたロープや網が結構浮遊してたりしていて、危険だったりもします。ですからぼくは今でもナイフは安全のための必需品だと思っています。
そういう考えを古いと切り捨てる人も最近は多いようです。でもこと安全に関しては古いも新しいもないはずですよね?そう思いませんか?
それとナイフは魚を水中で〆るために持って入るんじゃねぇですよ?そもそも、そう簡単に魚が水中で捕まえられると思うなよ?やつらは速いぞ。人間なんてイアンソープでも勝てねぇぞ (笑)
指示棒は他に、砂地やカイメンなどの表面、岩の表面などにいる生物を目立たせるために、その子にダメージを与えずに見えやすいように持ち上げるのにも使います。使える環境や生物は限られますけど。
もちろん使うときは、どんな場合も海中の環境にローインパクトであるように注意が必要です。海の中を荒らしに行くわけじゃないので。
指示棒は、ただの金属の棒なので汎用性が高いのです。
ダイブリールは、いろんな呼び方があります。ぼくの現場では単にリールって言ってました。こんなリールじゃなくて巻き尺を使う現場もありましたけど。
ダイブリールは色んな使い方があるのですが、今回はシグナルフロートっていうのを結びつけて、水中からシグナルフロートを打ち上げるのに使う予定です。
シグナルフロートとリールの実際の使い方は動画をどうぞ。
ラインの長さが 30m あるものを購入したので、ドリフトダイビングで水深 -25m から打ち上げて、ボートからの目印にしてもらうなんて使い方もできます。
ぼくは今後、個人的に好きじゃないこともあって、ドリフトはもうやるつもりはありません。ですが、たとえドリフトなんかじゃなくても、たとえば和歌山県串本町みたいに、ダイビングポイントに係留ブイが設置されていて、そこに何杯ものボートが係留される場合なんかにも、リールに結んだシグナルフロートを打ち上げることは、ダイバーの安全のために威力を発揮します。
串本では 1 つの係留ブイに複数のボートが数珠つなぎになるのですが (もちろんブイは 1 つでは足りないので複数あります)、先頭のボートが係留ブイに直接つながります。他のボートはそのボートを起点にして、ロープを使ってずらずらと数珠状に繋がって、それぞれを係留することなっています。
ですけど通常先頭のボートって、その時点で係留ブイに繋がっているボートの中では最初にダイビングポイントに来たボートになるので、ダイバーもまっさきにエキジットしてくることもあって、その中では最初に港に帰ることになります。つまり数珠つながりのボートの中で先頭は後続のボートが入れ替わらないとだめなのです。
するとどうなるかというと、係留していた全てのボートが全てのロープを解いてバラバラに分かれます。もちろんその後、全ボートが移動を行いますので、全ボートがエンジンを動かしてプロペラを回します。
また、ボートの中には係留したくても、もう余裕のある係留ブイがなくて、係留できないボートもあって、そいうボートはブイから離れた場所で浮かんでいます。どこかのブイの先頭ボートが帰港するまで、待つより他ないわけです。そういったボートはエンジンを止めてれいれば良さそうと思われてしまうのですが、実はそういうわけにもいきません。
海というのは多少なりとも流れがあるものですし、風に吹かれても簡単にボートは流れていきます。どれだけ流されない日であっても、エンジンを動かしてペラを回さないわけにはいかなかったりするのです。
プロペラは水の抵抗を徹底的に減らすためにナイフのような鋭利な刃物状です。なので回転するペラは非常に危険です。もしダイバーがペラのそばにいたり、ボートの動く先にダイバーがいたら、そのダイバーは一瞬で肉片になってしまいます。
もちろん船長も水面に注意していますし、船長 1 人だけだと目が届かないこともあるので、監視用のスタッフが 1 人、大きめのボートだと複数人のスタッフがボート上で監視していることもあります。少なくとも南紀串本では悲惨な事故防止のために、最低でもj1 人はボートに残るという運用になっています。
それでも船長やボートスタッフの目が届かないことはあるので (それくらい水面というのは水面上と水面下の視界を物理的に遮ります)、ボートで混むような場所では、わしはここにおるでぇ、注意してやぁ、ってボートの上の船長やボートスタッフにダイバーたちの存在を知らせるのにも、シグナルフロートとラインを使ったりもします。
リールは他にもアドバンスコースでのサーチアンドリカバリーの補助ロープとして使ったりします。距離の目印を入れてスキンダイビングの水平潜水のルートを示す目印にしたりと、こちらも汎用性が高いです。
またレクリエーショナル・ダイビングではなくテクニカル・ダイビングでの話になりますが、水中の洞窟に入る場合などに、帰り道を確保するためのルート工作に使ったりもします。
最後のルート工作のケースは 13 人の命っていう映画で、救助に当たるテクニカル・ダイバーが使用してるところを見ることができます。
13 の命は現在アマプラで観れます。ただ途中で殉職する軍人ダイバーがでてくるので閲覧注意です。映画は実話をもとにしてるのですが、ここまで本当のことを描かんでも、って描写があったり……特に殉職シーン……ぼくらが一番見たくないものなので……
テクニカル・ダイビングの世界は、レクリエーショナル・ダイビングの世界で仕事をしていたぼくには理解の外の世界なので、ご自身で調べてみてください。