昨日 SNS の X を眺めていたら Marine Diving という昔は雑誌媒体だった現在は Web メディアの OGP が目に入った。
自分自身がすでにシニア世代に突入していること、またシニア世代が次々にリタイアしていること、東京の有名老舗ダイビングショップのインストラクターが YouTube でシニア世代は引き際を知るべきと公言していること (気持は痛いほど解る)、安全管理上のリスク回避のために実際にシニアダイバーの受け入れを断るダイビングサービスが増えていることなどを踏まえて、ぼくらシニア世代はどうやってダイビングを継続つまりダイビングライフの延命を図るのか、しかも安全に潜ることを大前提に、もう若くはないぼくたちがどのようなダイビングライフのパラダイムシフトを指向するべきなのか、決して悲観的になることなく思いつきで考えてみた。
あくまでこれは一つの考えかたであって、ぼく自身の考えも流動的であることから他人に強要するような性質のものでは一切ないことは厳に申し上げておきたい。
今回の串本で思ったのが、もう私らのようなシニア層は浅目のポイント (串本だと備前、グラスワールド、住崎、アンドの鼻等) のアンカーそばで、ひたすら移動せずにマクロな世界を楽しむのでいいのではないか?ということ。アンカーからもう 20m 以上離れない。
泳がずに動かないとほんと楽。体が何より楽だし、動かないからエアがひたすらもつ。透明度の条件が悪くなければ、アンカーロープが常時見えているか、わずか数メートル移動すればアンカーが見える。なのでナビゲーションもほぼ不要。体は冷えるけど。
ぶっちゃけスキルがほぼ関係しなくなる。必要なスキルが安全な潜降と浮上、そして安全停止、短距離の移動のみになる。若い頃にハマっていた高度で複雑なスキルを駆使しなくても安全に楽しめる。
流れがあるから流れに逆らってひたすら泳ぐとか、どん深だから中性浮力に神経質になるとかほぼ無縁になる。深いところに落ちてく心配がないので、なんならちょっとならオーバーウェイトすら許容されてしまう。
体力、スキルが低下気味のシニア層にひたすら優しい
マクロというとカメラかっ!?金かかるじゃん!!となるかも知れないけど、ここでのマクロは目で見ることも含む。
写真を撮らない人にはダイビング用の虫眼鏡が発売されているので、それが強い味方!!ぼくらのような老眼でもサクラコシオリエビもバッチリ見える!!ライトもいるけど。
なんだかプールと変わらんじゃんと思った人、挙手!!
挙手した人たちにはあえて「否!!」と応えよう!!
海である!!魚は泳いで生きているのだ!!
ポイントにもよるけれど、やつらは泳いでやってくる!!人間があんまり移動しなくても待っていればやつらは来る!!
仮に来なくても少し泳ぐだけで彼等に逢える!!
やはりプールではなくて海なのだ!!
あえて言おう!!最高であると!!
立てよ国民!! ← なんか見すぎ
串本なんかだとイサキの大群なんてのも、アンカーからそう離れていない場所でも目の前にやってきたりする。昔の若かった頃みたいにガンガン泳がなくても楽しいぞ!!
そんなあまり移動しないダイビングスタイルでも注意点がある。マクロを楽しめ!!と言ったけど、当然マクロはフォトダイバーの独壇場でもある。今のダイバーの多くはフォトダイバーだ。下手くそな中性浮力とフィンワークで砂を巻き上げたら大ひんしゅくだ。
なので BC に多めに吸気して水底を気球のように離脱、数メートル上昇したら呼吸のトリミングと BC からの排気で中性浮力を取って中層で静止する。その後姿勢を水平にし、前にも後ろにも進まず、真横くらいの方向に 5、6 メートル移動する。
なぜそんな方向に移動するのかというと、前に進んだら、水底の生物が全部ビビって穴とかに逃げ込んでしまう。ハゼとかガーデンイール、エビの仲間を撮影している人がいると間違いなく大ひんしゅくだ。
なんで後ろを向いて移動するのもだめなのかというと、いくら数メートル上とはいえ、フィンキックの影響はでかい。やっぱり底生生物が軒並み引っ込んでしまい、再びカメラ派ダイバーに、あとでなぜそんな方向に移動するのかということで怒られる。
なので目の前にいた生き物に最小限の影響しか与えない横 90 度方向の移動が正解なのだ。
繰り返すけれども、この話は数メートル上昇してからの話なので注意!!体を立てた状態でフィンキックなんてもってのほかということになる。ロケットではなく気球にならないといけない。
なのでこれまで水中散歩やガンガン泳ぐスタイルだった人は、新しい行動様式とそれに必要なスキルを再獲得する必要がある。これまで自分はそこそこ潜れると思ってた人も最初は簡単にはできなくて自信を喪失して楽しめるぞ!!60 過ぎてまだ伸びしろだらけの自分を発見してむちゃくちゃ楽しい!!できないことがあると人生楽しいぞ!!伸び代しかねぇっ!!うまくなるための余地しかねぇっ!!ほかならぬ 21 年ぶりに潜ったぼくがそうだった (笑)
潜降も浮上も、もうね、シニアの人はロープを掴んでフィンキックを一切せずに腕でロープを手繰って潜降と浮上するのを強くおすすめしたい。なんでかというと、とにかく楽。耳抜きが間に合わずに少し浮上してなんてこともする必要がない。耳が抜けにくいなと思ったら止まるだけでいいんだから。
一切泳がずに潜降浮上するので、体力的にもむちゃくちゃ楽。エア保ちも当然良くなる。
潜降を開始してアンカーに集合したら、すでにエアを 50 ほど消費するダイバーを年齢に関係なくたくさん見てきたけど、この 50 のエア消費量が 10 〜 20 に減るぞ。格好つけてフリー潜降している場合じゃない!!楽してエア持ちを良くして体も楽に、がこれからのダイビングだ!!
安全停止もアンカーロープや潜降ロープ、安全停止バーに容赦なく掴まって行う。楽。中性浮力のスキル自慢はこれまでいやというほどやってきただろうから、そんなスキル自慢は捨ててしまえ!!
自慢より楽を優先だ!!
一番体力を使うエグジットに体力を残しとくんだ!!
とにかく、もう自分の年齢と体力の衰えを認めて、ひたすら自分の身体に優しい楽なダイビングに切り替えよう!!
現在潜水中の死亡事故のうち、病気を理由とするものが半数を越えている。心疾患と浸水性肺水腫 (SIPE) が多いというデータがある。極力泳がないダイビングはこれらの検査に現れにくい急性疾患を予防するのにも原理的に最適かも知れないぞ。
ダイビングは呼吸器系と循環器系に負担を強いる遊びだ。若い人たちでもそうんなんだけど、ぼくらはシニアだからこそ自分の体をいたわるダイビングを志向した方がいい。それが予期せぬ死亡事故リスクを減らす。自分と家族のため、そして自分のダイビングをサポートしてくれる人たちのためにも楽で体に優しいダイビングを志向しよう。
そんなダイビングでも、ダイビングはやっぱり相変らずとっても楽しいぞ!!
ぼくが串本から大阪に戻ってからまとめた、協調運動障害下でのスクーバダイビングの可能性を探るというページは、協調運動障害を持ちながらダイビングができるのか?どうすればできるのか、そして実際にやってみた、という内容になっているけれど、シニアダイバーにも役立つ内容が散りばめられているので、ぜひとも参考にして欲しい。障害者に優しい手順はシニアにも、若い人にも優しい。
特に問題になりやすいエグジットの手順を参考にしてみてほしい。
さて、このあまり移動しないダイビングスタイルにも注意点がある。あまり移動しないことから、マルチレベルダイビングというよりは箱型ダイビングの潜水プロフィールに近づく傾向がある。浅い水深ならあまり問題にならないけれど -18m を超えればそれは浅いと言われるダイビングポイントでもディープダイビング。
DECO Stop 警告を出さないように水深と潜水時間の管理はしっかりと。
またあまり移動しないとしても、例えば串本の住崎でサクラコシオリエビを狙うとする。すると彼らがいるのは水深 -25m にあるスリバチカイメンのひだの隙間だ。
彼等は小さいし人から隠れようとするので発見にとても苦労する。見つけてしげしげと観察や撮影をしようとした途端に彼らは小さな隙間に隠れる。とにかく目を離した瞬間に彼らはどこか見えないところに隠れてしまう。
なので彼らを撮影したり見るのには時間がどうしてもかかってしまう。DECO Stop が出やすい -25m の最大水深にひたすら貼り付くディープダイビングになりやすい。もちろんエアの消費も早くなる。
NDL 管理とエアの管理、水深の管理はやはり重要ということになる。当たり前だけど、あまり移動しないイコール安全が担保される、ではまったくないことには注意して欲しい。
何も考えずにぼーっと潜っていたら事故になりかねない。自己管理が必要であることに全く変わりはないので注意されたい。
それとハゼなどの底生生物のコロニーなどからの離脱方法について付け加えておく。次のスキルが必要となる。
生物を脅かさないように、また、砂を巻き上げないように静かにじっとしている状態をスタートの状態と考える。
離脱の第一段階は BC に吸気することにより上昇する。
5 〜 6m 上昇したら、BC からの排気、呼吸のトリミングで停止する。ここでももちろんフィンキックはしてはならない。生物を引っ込めてしまう。
姿勢を水平にし、コロニーに対して直角の方向を向く。まだキックを始めてはならない。
体を水平にしてコロニーに対して直角の向きに向いたら初めて小さくキックをして、周囲に水流を起こさないように細心の注意を払って直角に移動を開始する。
フラッターキックが有効。
5、6m メートル移動するまで進行方向を維持する
人に説明するときにオスプレイやハリアーになったつもりで、と言おうと思ったけど、あれは下に激しいダウンストリームを繰り出すからだめだ。
自分が気球になったつもりで!!フィンに頼らずに!!
自信がない人はプールで指導を受けながら練習するのがいいかもです。プールでフィンを一切使わずに水底と水面の往復を繰り返すの。BC と呼吸の調節だけで。
練習のときは圧障害にだけは気を付けて。エアエンボリズムとかは洒落にならないので。
頑張ってね。ぼくも頑張る。